ヴァッレ・ダオスタとフランスの国境 に位置するアルプスの最高峰「モンブラン」。
グラン・サン・ベルナルド/レ・クレーテ/ラ・クルーザ
Valle d’Aosta (ヴァッレ・ダオスタ)。イタリアでは最小の州で、フランスやスイスと国境を接する。イタリア語とともに、フランス語も公用語であるこの地域は独自の「山岳文化」とも言えるような地域性を持ち、くっきりとしたイタリアの色が薄い。 そして、州としては知名度がそれほど高くないが、その割には、親しみを持てる観光名所がたくさんあるのが特長だ。
ヴァッレ・ダオスタとフランスの国境に位置するアルプスの最高峰「モンブラン」。
この、登山家やスキーヤーの聖地であり、有名な栗菓子の名にもなっている峰の名前は、多くの日本人の耳に親しみがあると思う。
また、意外なところで日本人に馴染み深いものとして、セント・バーナード犬が思い出される。アニメ、あらいぐまラスカルやアルプスの少女ハイジでおなじみの、このずんぐりと大きな犬。
あらゆる犬種の中で最大級とされる。どっしり頼り甲斐がありそうな外見そのままに、雪山での救護 犬として18世紀からその活躍を見せていた。首には小樽をぶら下げ、その中 には救援物資が詰められている。この犬種に、セント・バーナード(英語)、つまり聖人の名前が付いているのには訳がある。
アルプス山脈に峠はいくつもあるが、その中の一つ、今ではグラン・サン・ベ ルナルド峠(伊)と呼ばれるこのパスは、古くからローマ軍や巡礼者、商人の 通行路となっていた。しかし、標高 2,469 メートル、冬季は氷点下30度といえば、雪崩や吹雪もめずらしくない。
遭難者は後をたたなかった。そこで聖職者ベルナルド(のちに聖人に列せられる)が所長となりホスピス(救護所)が建設され、この峠の名前はこれに由来する。セント・バーナード犬は、このホスピスをベースに活躍していた。
1960年代になると、中腹にトンネルが開通したため、冬季はあまりに雪深い峠は夏季のみ通行可能となり、現在では雪山の雄大な景観をたのしむ観光名所となっている。
昨年6月下旬。ついにこの峠を訪れる機会を得た。下界では初夏の陽気というのに、標高2000メートル以上ともなれば万年雪が残り、湖も半分凍っていた。ここがちょうど、イタリアとスイスの国境にあたる。
「ナポレオン率いる4万人のフランス兵たちは…」