ナポリ在住の鈴木です。
日本では、年明けの1月頃から八百屋さんやスーパーで見かけ始める春の食材・空豆。
イタリア語では「Fave(ファーヴェ)」といいます。
イタリアでも昔からビタミンや鉄分などの重要なタンパク源として食され、2月下旬ぐらいから店頭に並べられていますが、本当に食べ頃で美味しい時期は年に2度あります。
有名なのは、シチリア島のど真ん中エンナ市郊外レオンフォルテで栽培されるFava larga di Leonforte(ファーヴァ・ラルガ・ディ・レオンフォルテ)と、プーリア州フォッジャ県カルピーノで収穫されるFave di Carpino(ファーヴェ・ディ・カルピーノ)です。
・レオンフォルテ産の空豆は11月の2週目に種まきをし、除草剤は一切使用しません。収穫は3月終わりから4月にかけて。「Larga(ラルガ)」という名前の通り、他の空豆と比べて種子が大きく、形もいびつで色も薄緑というより白に近い。柔らかな甘みがあり、コクも強く芳醇な香りが秀逸です。
・カルピーノ産の空豆は10月中旬から11月初旬にかけて種まきをし、6月下旬から7月にかけて収穫します。大変小さく平たい種子の色は茶色。若干塩味と苦味も感じられるのが特徴的。
<各州の空豆の呼び方>
・リグーリア州・・・Bazanna(バツァンナ)
・ヴェネト州、サルデーニャ州・・・Fae(ファーエ)
・トスカーナ州・・・Baccello(バッチェッロ)
・マルケ州・・・Faa(ファーア)
・アブルッツォ州・・・Fav’(ファヴ)
・ウンブリア州・・・Scafo(スカーフォ)
・プーリア州・・・Fava d’ungulu(ファーヴァ・ドゥングール)、Fafe(ファーフェ)
・カラブリア州・・・Fefa(フェーファ)
・シチリア州・・・Faviani(ファヴィアーニ)
では、イタリアの空豆を使った代表的な料理をご紹介します。
1) Purè di fave(プレ・ディ・ファーヴェ)「空豆のピューレ」
2) Macco di fave(マッコ・ディ・ファーヴェ)「空豆のスープ」
シチリア州・南西部の街アグリジェントの伝統料理。空豆をメインにミネストローネで使用するタマネギ、人参、ジャガイモ、セロリなどを加えたスープ
3) Frittata con fave e formaggio
(フリッタータ・コン・ファーヴェ・エ・フォルマッジョ)「空豆とチーズのオムレツ」
具材でパンチェッタやスペックを加えたり、チーズはペコリーノ、カチョカヴァッロ、トミーノなどなど
4) Risotto con fave (リゾット・コン・ファーヴェ)「空豆のリゾット」
5) Pasta con pancetta e fave al pecorino (パスタ・コン・パンチェッタ・エ・ファーヴェ・アル・ペコリーノ)「空豆とパンチェッタのパスタ・ペコリーノチーズがけ」
空豆は豚肉ともよく合わされます。パスタの種類は州や地域によって様々。
ペコリーノチーズの粉やスライスを振りかけるのが通常。
*ローマでは、5月1日にフレッシュの空豆とペコリーノ・ロマーノ(羊のセミハードチーズ)を食べる習慣があります。*
僕が住んでいるカンパーニャ州では、火入れしたパンチェッタをスライスもしくはダイス状にカットし、2枚のパンに挟んで「パニーノ」にして生の空豆と一緒に食べます。
また、パンチェッタの代わりにソプラッサータ(豚の頭の部分を煮込んで煮こごり状にしたもの)やカピコッロ(豚肩ロースをサラミにしたもの)を挟んで食したりもします。*
*番外編*
・Fave dei morti (ファーヴェ・デイ・モルティ)「死者のお菓子(直訳)」
毎年11月始めに「諸聖人の祭日・万聖節」(*2017年は11月2日にあたります)
と呼ばれる、死者の魂のために祈りを捧げる日であり、伝統的に食べられるビスコッティです。
実際には空豆は使用せず、小麦粉、卵、アーモンドパウダー、松の実パウダーで作ります。
因みに地域によって名前もレシピも若干異なり、トレンティーノ=アルト・アディジェ州では「I cavalli(イ・カヴァッリ)」、ロンバルディア州は、「Pane dei morti(パーネ・デイ・モルティ)」、シチリア州は「Le mani(レ・マーニ)」と呼びます。
<イタリア現地で空豆と合わせるワイン>
カステル・ユヴァル|ヴァッレ・ヴェノスタ ミュラー・トゥルガウ