ピエモンテから来た男は言いました。「僕のワインを先ずは三ツ星のソムリエに飲んでもらい、認められたいんだ。」
レストランにソムリエとして勤務していると、ワイナリー側から営業に来ることがよくあります。
私がダル・ペスカトーレでソムリエを務めていた頃、聞いたこともない新参ワイナリーからコンタクトがありました。
「僕のワインを先ずは三ツ星のソムリエに飲んでもらい、認められたいんだ。」ピエモンテから来た男は言いました。
なんでも、方々の星付き有名レストランを廻ってワイナリーの主人自ら営業活動しているらしいのです。どんなものだか、と思いながらも彼の自信満々スマイルに押されて試飲した白ワインは土着葡萄品種のティモラッソ。
グラスを鼻に近づけた瞬間から魅了されました。「面白い!」骨格があり、塩味に支えられたボリュームがあり、かといってシャープ。
洋ナシやりんごなどの清涼感のある果実のフレッシュさがあります。甘ったるさはなく、凛とした澄んだ美しさをたたえるワインなのです。
樽を使ってないと言いながらもなんだかすごくしっかりした白ワインだな、と驚いたことを覚えています。
このMarina Coppi Fausto 「マリーナ・コッピ ファウスト」
だんだんと春めいてきた今の季節、私が一番おすすめしたいピエモンテの白ワインです。温度の変化を楽しみながらゆっくり飲んでみてください。少し温度を上げることによってペアリングの幅も広がると思います。
後日談ですが、この4年後、アルバの三ツ星レストランPiazza Duomoのワインリストに彼の作るティモラッソ「ファウスト」がオンリストされてるのを見つけました。
まず三ツ星から攻めるという彼の作戦は成功したようです。ワインリストを眺めながら、思わず頬が緩みました。
自ら作るワインを誇りを持って扱う男、フランチェスコは今では私の友人です。今日は一緒にランチのテーブルを囲みながら、昔話に花が咲きました(⌒▽⌒)
厳しい基準を満たしたワインだけを厳選し、毎月お届けいたします。イタリア国内トップレベルのレストランでソムリエとして活躍してきた林の信頼関係があってこそ契約に漕ぎ着けた、日本初入荷の希少なワインが多いのも魅力です。