心が洗われるような佳景、 Les Cretes (レ・クレーテ)を訪れる
北イタリアの東西を結ぶアウトストラーダ、A4。
ミラノからトリノ方面へ車で 向かえば、市街をすぎて少したった頃、晴れた日にはもう遠景として彼方にアルプスの山並みが蜃気楼のように浮かぶ。
A4をトリノの手前で思い切って北を 目指してハンドルを切ると、その山並みは180度の半円状に道路を囲む。さらに北上を続け、トンネルを越え、次第に山に吸い込まれていくようにアオスタを目指す。
今回の旅では、まずヴァッレ・ダオスタを代表するワイナリー、 Les Cretes (レ・クレーテ)を訪れることになっていた。
(レ・クレーテのカンティーナ、試飲スペースの建物)
時間より少し早く到着し、清々しい空気を吸い込み、景色に浸る。
カンティーナは今、ようやく改築が完成しつつあると聞く。山の形をした屋根の、モダン な建物の前から周りを見渡せば、アルプスを背にした葡萄畑。心が洗われるような佳景である。
面積も人口も少ないヴァッレ・ダオスタは、当然のように葡萄の作付面積も、ワインの生産量も少ない。その中で、レ・クレーテは25ヘクタールというワイン畑を持ち、家族経営のワイナリーとしてはアオスタで最大規模を誇る。
オーナーは 1700 年代の半ば頃フランスからこの地に移り住んで きたシャレール家で、彼らはもともと、小麦を作り、この地に水車小屋を作り、製粉農家として生計をたてていた。
葡萄を植えたのは1955年のことで、土着品種の葡萄栽培から始まった醸造は、今ではイタリア国内外で高い評価を得る国際品種シャルドネで一躍その名を馳せることになった。
近年、イタリアの シャルドネを語るにあたり、レ・クレーテの造る「キュヴェ・ボワ」は外すことができない、安定した地位を保ち、星付きレストランのワインリストにも常連だ。それに加え、ここではアオスタおなじみの土着品種の葡萄たちも栽培さ れている。フメン、ガメイ、プティ・ルージュ、プティ・タルヴァン。
それぞれにイタリアらしく、個性的な葡萄から作られたワインは最近建設されたばかりの試飲スペースでゆっくりと味わうことができ、その下の階はカンティーナ になっている。
「・・・モンブランのワインだよ!と言えばみな一発でイメージが沸くんだ。」