「・・・モンブランのワインだよ!と言えばみな一発でイメージが沸くんだ。」
場所を変えて、畑を見渡す高台でマネージャーのジュリオとスパークリングワインを飲んでいると、オーナーのコンスタンティーノが葡萄の隙間から坂道を登ってくるのが見えた。
コンスタンティーノはトレーナーとジーンズという、カジュアルな出で立ちで、そのアオスタ発祥ブランド、Napapijri ナパピリのトレーナーにも山のマークがある。そして、ここのワイナリーの特徴的なエチケットにも、山並みが描かれている。
「よく来てくれたね。」と言いながら、改めて皆で乾杯する。コンスタンティーノが快活に話初めた。
「アオスタのワインと言っても、それ、どこ?ってかんじで、わかってくれない人もいるけれどね。 モンブランのワインだよ!と言えばみな一発でイメージが沸くんだ。」と楽しそうに笑う。まるで、20年前の自分のことを言われているようだ。
大学時代、僕はスキーが好きだった。好き、というか大好きで、熱中していた。自分の時 間も、バイト代も、随分とスキーに費やしすぎてしまった感がある。その頃か ら、スキー好きには垂涎の地、アルプス周辺の地理には明るかったし、フランス側のシャモニーとか、イタリア側のクールマイヨールなどの名前を聞くと心 が躍り、まだ見ぬアルプスの雪山を心に描き、憧れるばかりだった。時が変わ って、今このような形で、ワインを通じてこの地とつながりを持つ自分をなん となく第三者的に眺めながら、改めて自分の人生にどれほどの分岐点があり、 どれだけの選択肢を選びながらここまで来たのかを、味わった。
歴史の中から生まれた、新鮮な驚きに出会うことのできるオーベルジュ