Vino Hayashiの川嶋でございます。
本日はピエモンテ州、世界遺産の畑よりワンランク上のモスカート・ダスティについてお送りいたします。
目次:
1、とにかくうまい!これがモスカート?一度飲んでみて欲しい微発泡
2、おなじみのモスカートにも違いがあります
3、荒ぶるトラクター、崖の上の恐怖体験 生産者「Ca' D'Gal(カ・ド・ガル)」
◆とにかくうまい!これがモスカート?一度飲んでみて欲しい微発泡
2019年夏、イタリア出張のための事前試飲でこのワインと出会いました。
イタリア駐在員の鈴木が「ぜひ飲んで、絶対飲んで」と太鼓判を押していたのがこちらのモスカート・ダスティです。
カ・ド・ガル|モスカート・ダスティ カネッリ “サンティラーリオ” 2019
「モスカートかあ・・甘いやつだよね」と罰当たりにも内心思っていた私ですが、飲んでみてびっくり。
確かにモスカート自体のブドウの甘みは感じるのですが、熟成からくる複雑味、レモンやセージなどのハーバルな香りがふんわり香ります。一口飲んでほんのり幸せを感じる素敵なモスカート・ダスティでした。「月刊DOCG」では秋口にお届けしましたが、これ、夏にもいいんではないでしょうか?
ところで、普通のモスカート・ダスティとはどう違うのでしょうか?気になりますよね。ご説明いたします!
◆おなじみのモスカートにも違いがあります
アスティDOCGは図の通り「アスティ・スプマンテ」と「モスカート・ダスティ」の大きく2つの分類に分けることができます。
いわゆる安ウマのイメージがあるアスティDOCGですが、一味違うのがカネッリのワインです。
アスティ発祥地であるカネッリ村では手摘みによる収穫しか認められておらず、ブドウ畑は標高165~500mの丘陵地帯と定められています。面積は合計で僅か100ヘクタールのため、カネッリの生産量は増えてはいるものの約50万本と少なく、アスティの中でも1ランク上の位置づけです。
生産者はこの村で造られるモスカート・ダスティの品質に自信を持っていることから、2001年に大量生産型のアスティDOCGとのクオリティの差別化を主張して独立を目指し、カネッリ村は2011年にアスティDOCGのソットゾーナ(特定地域)とされました。
そして2019年5月にイタリア農林省およびピエモンテ州においてラベルにモスカート・ダスティDOCGカネッリと表記する暫定ラベルの認証を得ることができ、DOCG昇格への道が開けました。
2021年5月、「国立原産地呼称委員会」はDOCG昇格が適当と判断してEU(本部・ブリュッセル)に申請を申し出ており、近年Canelli DOCGもしくはMoscato di Canelli DOCGとして正式に昇格予定。
私が飲んだモスカート、
カ・ド・ガル|モスカート・ダスティ カネッリ “サンティラーリオ” 2019
一味違ったモスカート・ダスティ、ぜひ一度お試しください。
◆荒ぶるトラクター、崖の上の恐怖体験
生産者「Ca' D'Gal(カ・ド・ガル)」
取材日の朝、Ca D'Gal(カ・ド・ガル)のアレッサンドロさんに促され、トラクターに乗り込みました。
曰く「今日はこれに乗って畑を案内するよ」。物珍しさも手伝って、私たち取材陣は喜びながら荷台に飛び乗り出発。
はじめは平坦な農道を快走するばかりでしたが、路傍の木枝が顔にバチンと当たった時にはすでに遅く、未整備の砂利道をトラクターが唸りながら駆け上がりました。
真横は崖、ハンドルを少し誤っただけで転がり落ちるような急斜面です。
一同絶叫の中、アレッサンドロさんは「ハハハ。つい一週間前に来たインポーターはあんまり怖がるんで途中で降りたよ」とのんびり笑いました。豪胆にして鷹揚。何とも言えない魅力的な人物です。
畑に降り立つと、頰に風が冷たく強く絶えず吹きつけます。谷底から山の頂上まで緑の畑が波打つように続き、土地全体が喜びにうねっているような不思議な感覚に包まれました。
見渡す限りのモスカート・ビアンコ。ライトグリーンの小さな果実が鈴なりに生って、収穫されるのを待ち焦がれています。
「畑の高低差が激しいから、糖度も区画によって違う。斜面の頂上と谷底は陽が当たるので糖度が高くなる。対して、中腹は糖度が低い。ブルゴーニュでいうところのミクロクリマだね。どちらが良い悪いではなく、それぞれのブドウをミックスするのが大事なんだ」。
天空の畑という言葉がぴったりのカ・ド・ガルの畑はそれ自体が世界遺産。そのため、収穫時期も予め法律で定められています。波打つ生命を感じる、なんとも不思議な場所でした。
◆本日ご紹介したワインはこちら
\世界遺産の畑から生み出されるモスカート/
カ・ド・ガル|モスカート・ダスティ カネッリ “サンティラーリオ” 2019
5,280 円(税込)
標高500m、南向きの石灰岩砂質の土壌。ブドウの樹齢は70年と高く、手摘みで9月下旬に収穫。
圧搾後、沈殿物を取り除きながらステンレス製オートクレーブ(内部を高圧力にすることができる耐圧性のタンク)に移し、0°Cまで冷却した後発酵し、春頃までアルコール度数2.5~2.8%の状態で熟成。
清澄後タンク内で二次発酵を行い、5月末にボトリング。ワインはレモングラス、レモン、セージなどの複雑でドライな香り。
心地よい酸味をしっかりと感じつつも、余韻にはほんのりと甘味が広がります。
泡はクリーミーで柔らかく、綺麗なアロマに加えて骨格も感じられることから、圧倒的なクオリティの高さを誇るモスカートです。
ひとこと:白ワイングラスで香りの変化をお楽しみください!
川嶋 Vino Hayashiのアラフォー女子。千葉県九十九里出身、陽気な海育ち。 某大手ワイン輸入商社、銀座店で7年ソムリエとして勤めている間、 「キャシー川嶋」の名で出した店舗メルマガが大人気となり、 調子に乗ってソムリエのキャリアをあっさり捨てライターへ転身。 好きなワインはピノ・ノワールに熟成ボルドー。 イタリアワインなら飲み頃のヴィーノ・ノービレ! 好きな言葉は「やってればなんとかなる」。