Vino Hayashiの川嶋でございます。
本日はカンパーニア州、17世紀から続く老舗ワイナリーが造る超ミネラリーグレコについてお送りいたします。
目次:
1、地元のリストランテも在庫を切らさないザ・名門のグレコ
2、グレコはギリシャ、トゥーフォは凝灰岩を意味
3、貴族も大変です、お家騒動のトホホ話 生産者「Cantine di Marzo(カンティーネ・ディ・マルツォ)」
◆地元のリストランテも在庫を切らさないザ・名門のグレコ
弊社ラインナップの中でも人気が定着しつつある、カンティーネ・ディ・マルツォ|グレコ・ディ・トゥーフォ。
ミネラリーで酸もビシッと効いていて、暑くなるこれからの季節に、とっても嬉しいワインです。
初めて飲んだのは2018年夏のイタリア出張時でした。
カンパーニア州・アヴェリーノ県はヴェスーヴィオ火山裏側の“ 隠れた銘醸地” です。
南イタリアのバローロとも評される銘酒タウラージを探し求めるワイン関係者以外、外国人ツーリストはほとんど見かけません。気候は冷涼で肌寒いくらい。
ランチ訪れた食堂でランチを食べていると、若いソムリエが自慢げに持ってきたのが今回のグレコでした。
今からカンティーネ・ディ・マルツォに行くんだというと、目を輝かせて「Bravo!」。
「僕の大好きなワイナリーです。ほら、ウチの店でもいつもストックを切らさないようにしています。寄り添うような、静かだけど頼もしい雰囲気が好きなんです」。
そんなことをまっすぐな瞳で言われたら、どうしたって飲みたくなってしまいますよね。
では、次に簡単にグレコ・ディ・トゥーフォについてご説明しましょう。
◆グレコはギリシャ、トゥーフォは凝灰岩を意味
ナポリから東に約70km。人口約900人の小さな村トゥーフォを中心にグレコ・ディ・トゥーフォの生産地域があります。
かつて先史時代は海であったことから、トゥーフォ周辺では海底で化石化した海洋生物起源の硫黄化合物と、貝殻の堆積による石灰岩が見られます。
トゥーフォとは凝灰岩を意味しており、火山の影響を受けたカンパーニア州では多く見られます。
ワインはギリシャから伝わってきたとされる火山性土壌での成長に強い古代品種グレコを85%以上使用します。
補助品種として15 %まで使用が認められているコーダ・ディ・ヴォルペは、柔らかさを与えてくれる品種です。キツネのしっぽと言う意味のユニークな名前で、ブドウの蔓がキツネのしっぽのように巻くことから名付けられました。
リンゴや洋ナシ、カリン、モモ、アプリコットなどの香りに加え、熟成によってはアーモンドやはちみつといった香ばしい香り、そして火打石や硫黄といった鉱物的な香りも広がります。
味わいの果実味は控えめながら、酸味と硬質なミネラル感、そして余韻には心地よい苦味や塩味が感じられるのが特徴です。
◆貴族も大変です、お家騒動のトホホ話
生産者「Cantine di Marzo(カンティーネ・ディ・マルツォ)」
カンパーニア州最古参カンティーナの一つ、17世紀からの葡萄樹を保持している貴族カンティーネ・ディ・マルツォの歴史は1648年から始まります。
現オーナー、フェッランテ・ディ・ゾンマさんに歴史あるワイナリーならではのお話をたくさん聞くことができました。
「創始者のシピオーネは、街にある古城の地下室を利用しセラーを建設しました。祖母の代を最後に、波乱の幕が開けました」。
彼は穏やかな口調で語り始めました。その声は洞窟の壁に反響して、物語めいた雰囲気を醸し出していました。
「私の父には兄がいました。この人がもう、かなりの曲者で(笑)。悪い人ではないのですが、真面目過ぎて詐欺に遭い、ある日財産を失ってしまったのです。
兄の姿をよく見ていたのでしょう、私の父は懸命に働きました。石油関係の会社に勤めていたこともあり、世界中を飛び回っていたのです。父にくっついて私自身も世界中を旅しました。
ロンドン、パリ、モスクワ・・ワインの醸造はブルゴーニュで学びました」。
「なぜそんなに頑張ることができたのですか?」
ここで口を挟むと、フェッランテさんは笑って言いました。
「私以外の家族の誰もワイナリーに関心がなかったからですよ。
財産や権利のことでいつも争いが絶えなかった。ここで立て直さないと、一家共倒れになってしまう。そんな未来は絶対に嫌でしたから」。
なかなか苦労人のフェッランテさんでした。
◆本日ご紹介したワインはこちら
カンティーネ・ディ・マルツォ|グレコ・ディ・トゥーフォ 2019
4,400 円(税込)
10月中旬頃に手摘みで丁寧に収穫し、ステンレスタンクで6ヶ月間シュールリー熟成。火打石やオレンジの花、ライムの香り。心地よい酸味とミネラルが長く伸び、しっかりとした骨格があります。余韻に感じる塩味とほろ苦さが全体を引き締めます。
川嶋 Vino Hayashiのアラフォー女子。千葉県九十九里出身、陽気な海育ち。 某大手ワイン輸入商社、銀座店で7年ソムリエとして勤めている間、 「キャシー川嶋」の名で出した店舗メルマガが大人気となり、 調子に乗ってソムリエのキャリアをあっさり捨てライターへ転身。 好きなワインはピノ・ノワールに熟成ボルドー。 イタリアワインなら飲み頃のヴィーノ・ノービレ! 好きな言葉は「やってればなんとかなる」。