約5000年の歴史があるといわれているイタリア産チーズ。その土地ごとの固有品種が楽しいワインと同様、チーズも各地の郷土を色濃く表し、イタリアの食卓には欠かせないものです。
そんな歴史あるイタリアチーズですが、まだまだチーズと言えば、フランスを始め、アメリカ、スイスを思い浮かべることだと思います。
またスクールやセミナーでも、やはりフランス産チーズを中心にカリキュラムを組み込まれることが多いです。
さらにスーパーなどの販売店でもどこも一緒で代り映えしないイタリアチーズばかりが陳列しています。
そんなイタリアチーズだからこそ、こちらでは深掘りをしていきますので興味がある方はお付き合いください。
【イタリアチーズの特徴】
北にはアルプス山脈、そして半島の背骨のように南北に伸びるアペニン山脈があり、西は地中海、東はアドリア海に面した国土。海と山の地形、気候風土が、チーズづくりに大きな影響をもたらします。
細かなテロワールももちろん存在しますが、まずは大きく地域を捉え、リグーリア州およびエミリア・ロマーニャ州以北を「北部」、それより南を「中・南部」として、どんな特徴があるのかを学ぶことにしましょう。
【イタリア北部】
4000m級の山々が連なるアルプス山脈と、その山麓地域、そしてポー河流域の広大な平野という3つの地域に、北部は大きく分けることができます。
アルプスの山岳地域では伝統的に大型で保存性の高い「山のチーズ」が多く、また、山羊乳や混乳製のチーズもつくられています。
ロンバルディアなどの山麓地域では、ゴルゴンゾーラやタレッジョなどの「ソフトタイプのチーズ」が有名。
気候は、比較的温暖で降水量も多く、緑に恵まれていて、平野となるポー河流域では、集約的な酪農や大規模な乳製品の製造が行われ、イタリアD.O.P.生産量No.1のグラナ・パダーノやパルミジャーノ・レッジャーノなどもあり、この地域だけでイタリア全体のチーズ生産量の大部分を占めています。
【イタリア中・南部】
地中海に浮かぶサルデーニャ島とシチリア島も含め、地中海らしい特徴のあるエリア。平地が少なく、海に面しながらも山地がほとんどを占めているこの地域の気候は、全体的に暑く、乾燥しています。
そのため、牛も飼われていますが、羊や山羊が多く、「ペコリーノ(羊乳製)チーズ」が各地に根づいています。
また、カンパーニア州やラツィオ州の一部の地域では、水牛も飼育されていて、モッツァレッラを代表とする「パスタフィラータタイプ」のチーズがつくられているのも、大きな特徴です。
イタリアチーズのタイプ別
個性豊かなチーズたち。日本で流通しているものだけでもその種類は数百種類ともいわれていますが、個々の特徴によって整理することができます。
チーズの分類方法は国によって異なり、原料乳の種類、製造方法、製品中の水分や脂肪の含有率など、さまざまな分類方法があります。ここでは、一般的なイタリアチーズの6つの分類をご紹介します。
1.フレッシュタイプ
主にミルクを凝固させ、ホエイを分離してすぐに食べられるチーズ。原料乳は、その土地で飼育されている牛、山羊、羊、水牛などさまざまで、水分が多く、軟らかいものが主流。
成形されず、容器に入れて販売されているものもあり、成形されているものでも、熟成させないチーズはフレッシュタイプに分類されることが多い。
2.パスタフィラータタイプ
「パスタフィラータ」という独特の製法でつくられるタイプ。乳酸発酵を進めたカードを細かくし、熱湯で溶かしながら練って伸ばし、繊維状の生地(パスタ)に仕上げてから成形するという製法で、水牛または牛のミルクを使用。
フレッシュなものだけなく、乾燥熟成や燻製したものもあり、イタリア南部で多くつくられている。
3.ソフトタイプ
チーズの表面に白カビや酵母を繁殖させたり、塩水や酒で表面を拭ってリネンス菌という微生物を繁殖させたりすることで、熟成を進め、表面から内部に向かってチーズの組織が軟らかく変化していき、風味も濃厚になっていくタイプ。
原料になるのは牛のミルクのみならず、山羊乳製や羊乳製、混乳製のものもあり、多様なものがある。
4.青カビタイプ
チーズの内部に青カビを繁殖させて熟成させるチーズで、総称して「ブルーチーズ」とも呼ばれている。
青カビの生育には酸素が必要なため、チーズの内部にわざと隙間をつくったり、金串で孔をあけたりして、青カビの繁殖を助ける。
原料乳は主に牛のミルクだが、山羊や羊などのミルクを使うものもある。
5.セミハードタイプ
やや硬く、しっとりとしている生地のチーズ。熟成期間は1ヶ月から6 ヶ月程度のものが多く、おだやかな風味が特徴で、料理の材料としてもよく使われる。
原料乳は、牛や羊のミルクが主流で、オリーブの実やワインの搾りかすなど、他の特産品を混ぜ込んだり、表面にまぶしたりしたフレーバードチーズもある。
6.ハードタイプ
熟成期間が長く、なかには3 年以上の熟成というものも。熟成期間中の手入れによって、硬くしっかりとした表皮がつくられる。
水分は少なく、熟成によってアミノ酸などのうま味成分がつくられるので、時間の経過と共に、濃厚な味わいに変化していく。原料乳は、牛や羊のミルクが主流で、歴史のあるチーズも多い。
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