「まじめに面白がる」をテーマに、毎月ひとつの土着品種を深掘る「イタリアワイン土着品種研究会」
今回は銘醸地シチリアの品種『グリッロ』の歴史とブドウの特徴を解説していきます。
興味がある方は最後までお付き合いください。
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▷▶ムシータ|シチリア レジエテッレ グリッロ
グリッロの特徴は?
シチリア料理と合わせやすいフレッシュで酸味のあるカジュアルで安価なタイプが多いが、凝縮感を備え長期熟成も可能なスタイルに醸造されることもある。
また、酒精強化ワインであるマルサラの主要品種として使用されるとおり、非常に幅が広くフレキシブルな品種。
ブドウの房と葉っぱの形状は?
果房は中ぐらいの円筒形、または円錐形。
果粒の大きさは中程度か大きめで丸みを帯びている。
果皮はやや厚めで硬い。透明度のある金色がかった黄色で、表面の蠟質の白い粉は少ない。
通常9月中旬頃に成熟する。
大きさは中型。五裂しており深い緑色で少々光沢がある。無毛でなめらか。
グリッロのシノニムは?
Riddu(リッドゥ)
Rossese Bianco(ロッセーゼ・ビアンコ)
Moscato Cerletti(モスカート・チェルレッティ)
グリッロの歴史について
グリッロは、主にシチリア州西部トラーパニ県にて栽培されている土着の白ブドウ品種である。
シチリアに存在する100以上の土着品種は、青銅器時代(A.C.3000~A.C.1200)にギリシャから持ち込まれ、その多くはイタリアのみならずヨーロッパの品種の遺伝的起源とされる。
しかしながら、グリッロはそのような自然交配の大波から生まれた品種ではなく、人為的に品種改良によって誕生した品種ということが近年の研究で判明した。
19世紀後半、農学者アントニオ・メンドーラ男爵(※1)は、シチリアの土着品種であるCatarratto(カタッラット)とZibibbo(ジビッボ)の2品種を交配し、新たなクローン品種Grillo(グリッロ)を作ることに成功した。
その品種は、親交のあった醸造学の祖ジョヴァンニ・バッティスタ・チェルレッティ氏(※2)に敬意を表し、当時は「Moscato Cerletti(モスカート・チェルレッティ)」とも呼ばれていた。
また、彼の文献によればクローン研究の主な目的は、酒精強化ワインのマルサラにストラクチャーと豊かなアロマを加えられるようにすることであった。
その後、グリッロはマルサラワイン(※3)の主要品種として生産を伸ばすこととなる。
グリッロは、生命力が強く比較的病気への耐性がある品種で、成長する過程では酸の数値を保ったまま糖分の充実を見込めることも特徴的なことの一つである。
また、バイオタイプAとBが存在し、Aはよりフレッシュな印象のワインになり、ソーヴィニヨン・ブランにも似たアロマをもつ。
Bはアルコール感があるしっかりした構成のワインになり、より複雑なアロマで蜂蜜のようなニュアンスもありマルサラに適している。
20世紀後半になると、マルサラワインの需要減退の影響などで生産量が減り続けていたが、近年はフレッシュな辛口の白ワイン(バイオタイプA)としての需要が伸び、トラーパニ県のみならず、シチリア州全域での栽培・ワイン生産が増えている。
1970年にイタリア全国ブドウ品種登録書に登録された。
※1 アントニオ・メンドーラ男爵・・・シチリア州アグリジェント県ファヴァーラ出身の農学者。4,000以上のブドウ苗を研究していたとされる。
※2 ジョヴァンニ・バッティスタ・チェルレッティ・・・ロンバルディア州キアヴェンナ出身の研究者・醸造家。ピエモンテ州ガッティナーラにイタリア初の醸造学の研究室を設置。1876年、ヴェネト州コネリアーノにイタリア初の醸造学校を設立。
※3 マルサラワイン・・・スペインのシェリー、ポルトガルのポートとマデイラとともに世界4大酒精強化ワインと呼ばれる。原料となる白ワインにブランデーや白ワイン由来の蒸留酒を加え、木樽で熟成させる。白ワインベースの場合、グリッロの他カタッラットやインツォリアも使われる。
イタリアワイン土着品種研究会とは?
毎月ひとつのテーマ品種の歴史、特徴、ペアリングなどの解説付きテキストとテーマ品種のワインを2本から3本お届け。
\こんな方におすすめ/
✅ワインショップやレストランに取り扱いがない土着品種に興味がある方
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