
こんにちは、塾長の井手です。
毎月お届けするワインの取扱説明を皆さまにお伝えしていきます。美味しい飲み方やペアリングのポイントをぜひ参考にしてください。プロのソムリエも知らない知識や理論、独自の観点からワインを分かりやすく説明します。
12月でお届けワイン
ロンバルディア州
【泡】ムラトーリ|フランチャコルタ シンビオティコ NV

[重要] スパークリングワインをシャンパンと呼んではいけない理由
何でもかんでも『スパークリングワイン』を『シャンパン』と呼ぶ人が多くいますが、その時点でワイン経験が薄いなと判断されます。
では何と呼ぶか?
ワイン経験が長くなると、『スパークリングワイン』と言う名前が長すぎて
『泡(あわ)』と呼ぶようになります。
注文も「何か開いている泡ありますか?」と尋ねます。「カヴァとシャンパンが開いています」とか返答がきます。
かなりスマートな注文の言い方でコイツ経験あるな!と判断されます。

飲み頃は? 勿論 開けたてです!
泡は開けたてです!
[ここも重要]
しかし!泡が弱まった時に美味しいスパークリングワインが本物です!
プロは試飲会で味を見極める時、グラスをスワリングして泡を軽く抜きます。
シャンパンを筆頭に『泡の強さ』と『ネームバリュー』で味わいを誤魔化しているスパークリングワインが多くあります。
一次発酵のワイン造りの工程で『良いワインを造り出せるか!』が味わいを大きく左右します。
(ドサージュ(補糖)を行う泡に対しての良いブドウとは酸味とミネラルが強いブドウです)

温度帯は?
10度〜12度 です。
熟成した味わいは少し高めの温度で!
キンキンに冷やしすぎると熟成由来の複雑なアロマが隠れてしまいます。
抜栓後、 セラーがない場合は冷蔵庫で保管してください。
良い泡を飲む時のグラスは大きめで、徐々に温めながら香りと味わいの変化を楽しみましょう。
大きめのグラスでじっくりと楽しむのがおすすめです!

この『泡』は『RM』の『ブラン・ド・ブラン』の『レゼルヴ』です!を説明します。
・『RM』とは?
レコルタン・マニピュラン(Recoltant Manipulant)の略です。
簡単に言うと自社畑でブドウを栽培、収穫、醸造、瓶詰めまで行う小規模生産者のことです。
畑と醸造家の個性を楽しめる『RM』はかなり高額でレアです。
・対して大多数を占める『NM』は
ネゴシアン・マニピュラン(Negociant Manipulant)の略で、
ブドウ栽培農家からブドウやワインを買い付け、自社で醸造、調合、熟成させて製造する生産者のことです。
「モエ・エ・シャンドン」「ヴーヴ・クリコ」など、大手メゾン(会社)のほとんどがNMです。
・たまに【CM】も見かけます。
コーペラティヴ・マニピュラン(Coopertative Manipulant)の略で、
生産者共同組合(地域の農協みたいな感じ)も出会いますが、NMが圧倒的に多いです!
シャンパンで使う用語ですが、ブドウ栽培から瓶詰めまで行う小規模な泡専門の生産者を『RM』と呼んでいます。

・『ブラン・ド・ブラン』とは?
ブラン・ド・ブラン(Blanc de Blancs)は白ブドウのみを用いて作られた白スパークリングワインを呼びます。
Blanc=ブラン=白 白ブドウで造った白スパークリングワイン。(大概はシャルドネです)
特徴はフレッシュで繊細な酸味!
・対して『ブラン・ド・ノワール』(Blanc de Noir)とは
Noir=ノワール=黒 黒ブドウで造った白スパークリングワイン。
特徴は果実味豊かでドライ!(大概はピノ・ノワールかピノ・ムニエの混醸か単一品種)
・今回お届けの泡はシャルドネ100%で造るので『ブラン・ド・ブラン』です!

・よく聞く『ブリュット』とは?
ブリュット(Brut)は、スパークリングワインの甘辛度の表示段階の一つで、
「辛口」という意味
ドサージュ(補糖)される糖の量が 15 g/l 以下なので辛口に仕上がります。
・ドサージュ(補糖)を何故するか?
瓶内で二次発酵をする工程で必要な『瓶内に酵母と酵母のエサとなる砂糖を加えて二次発酵させます』
瓶内で二次発酵した後に残る、瓶内の酵母を抜き取る作業(デコルジュマン)、
『澱引き(Degorgement デゴルジュマン)』で澱と共に排出し、少し減ったワインに糖分の入ったリキュールを加えるのがドサージュです。

・最後に『レゼルヴ』とは?
「レゼルヴ(Reserve)」は「熟成された」という意味で、通常よりも長い熟成期間を経てから出荷される熟成型のワインを指します。
熟成させる事でトースト香やナッツ香など酸化熟成の香ばしい香り、
落ち着いた酸味、柔らかい泡、酵母や香ばしさを感じる味わいに変化します。
レゼルヴ(Reserve)とはフランス語で、
イタリア語=Riserva (リゼルヴァ)、スペイン語= Reserva (レセルバ)、英語=Reserve (リザーブ)
全てラテン語の reservare (レゼルヴァーレ)に由来しています。 直訳すると「保留する」「保存する」「取っておく」です。
世界一有名なドンペリもP1、P2、P3と熟成をさせて良い状態で蔵出しします。(P2で8万円以上、P3は100万円以上する物も)
P=「Plenitudes(プレニチュード)」(熟成)の頭文字です。
熟成が如何にシャンパンを美味しくする大切な工程かご理解いただけたと思います。
長くなりましたが、
この『泡』は『RM』の『ブラン・ド・ブラン』の『レゼルブ』です!を説明できたでしょうか?

余談ですが、
・流行りの『ノン・ドサ』とは?
フランス語の『ノン・ドサージュ(Non dosage)』の略です。
たまに『パ・ドゼ(Pas Dose)』と呼ぶ人もいます。
イタリア語だと『ドザッジョ・ゼロ (Dosaggio Zero)』
↑全て補糖ゼロと言う意味です。
澱引き後に糖分の入ったリキュールを加えないので超辛口に仕上がります。
※勘違いが多いポイント!
①二次発酵を行う時の糖分は添加します。(そもそも二次発酵出来ない!)
②二次発酵後の糖分を添加しません。
ドサージュ添加無し?じゃ〜量が減ったままかい!と思うかもしれませんが同じワインを加えています。
※要するにノン・ドサージュ以外は後からリキュールを添加して味を調整するので『ブドウ以外の味わいが入ります』
シャンパンの味=ドサージュしたリキュールの味だ!と誇張して言う人もいますが、結果的に美味しいかどうかが大切だと思います。

味と香り
ワオッ!熟成した上質なシャンパンみたい!酵母やローストした香ばしい香りと味わい!
香り:酵母やアーモンドの様な香ばしい香り、錆びた鉄の香り。
味:炭酸はシルキーで滑らか、酸化熟成の香ばしさと旨みがある、酵母の香ばしさとシェリーの様な旨み、ドライな蜂蜜の苦味。
何故?何故?なぜ?
この “シンビオティコ”は NVなのにヴィンテージシャンパーニュの熟成した味がするのか?
“シンビオティコ”を試飲した時、不思議な感覚でした。
2025年にリリースされた NV(ノンヴィンテージ)の味わいを凌駕している...
『柔らかい溶け込んだ泡立ち』
『強い熟成香と濃い色調』
『シェリーのような香ばしい旨味と味わい』
この条件が揃うのは上質な熟成したオールドヴィンテージのシャンパン
・この味わい造るカラクリを説明しましょう!
シャンパンに旨味を与える『熟成の工程』を
『SO2(亜硫酸)無添加でワインを造る』=『酸化を促進させてシェリーの様な旨味を纏ったワイン』を造ります。(SO2=酸化防止剤)
簡単に『造ります』と書きましたが、このSO2(亜硫酸)無添加で美味しいワインを造る事が凄い技術レベルなんです。
『酸熟に耐える最良のブドウ栽培』と、『最高の醸造技術』、2つに自信がある生産者しか造れません!
その、上質な酸化熟成ワインを使い、瓶内二次発酵させる事でシンビオティコは完成します。
泡立ちも酸味やミネラルも心地良いレベルに調整しています。
要するに一時発酵の過程で造るワインの味が『シェリーのような酸化熟成した味わい』です。
その『シェリーのようなワインを瓶内二次発酵する』事で熟成感を造りだします!
プレミアムシャンパンのビンテージ感を見事に1万円で表現しています!技術と情熱が造りだした、凄いワインです!
プレミアムシャンパンを買うと値段の高騰が凄くて2万円以上はします。
そこから熟成させる事を考えると膨大な時間とコストがかかります。
熟成状態をチェックする事もできません。
熟成シャンパンを楽しむ為には、さらに高いお金を払い、良い状態の熟成したシャンパンを購入するしかありません…。
熟成感を楽しめる泡を探す事は難しいということをご理解いただけましたか。
このワインを紹介するとソムリエは驚いた顔をします。
シャンパンの世界を識っている熟練ソムリエほど驚き、感動すらしてくれます。
グラスの中で泡を抜いた状態で美味しい泡が本当に美味しい泡です
私の美味しいと思う泡の定義は産地でも値段でもなく『2杯目飲みたいワインが美味しいワイン』です!
ベストペアリング
トンカツソースやお好み焼きソース、甘口醤油と凄まじく合います!
甘味が補填され香ばしさが同調しまくりです!


・和牛塩焼き、牛の甘い脂肪が酵母感と同調して伸びてくる!赤ワインより牛の旨味を楽しめる!サッパリさせながら旨味を引き出す不思議なペアリングです!焦げ目を付けてください!美味しいです!

・お刺身の盛り合わせ、臭みが全くでない!味付けは塩だけで旨みが補填されて美味しい!甘口の醤油だと神ががります!刺身がこんなに合う凄い泡です!マグロ、ブリ、サーモン、鯛、甘エビを試しました。
・スモークサーモン、スモーク感と酵母感が同調して旨い!旨味を伸ばしてくれるペアリング!



・とんかつ、美味しい!脂がある分ボリュームが合って香ばしさの同調が心地よい!
トンカツソースと凄まじく合う!!酸味もコクのある甘味も心地よい!

・揚げ豆腐のグリル、カリカリの香ばしさと酵母感が同調して美味しい!
甘口の醤油かけたら最高です!
・アルトバイエルン、燻製の香ばしさと肉汁の旨味と酵母感があう!好きなペアリングです!

青カビ、カマンベール、パルミジャーノは特に感動のペアリングでした!
最後に変わった食材!
・ブラックチョコレート、好きな合わせ方!チョコのマッタリしたコクをサッパリさせながら旨味のあるシェリー感が伸びてくる!
結論 熟成感と酵母感のあるプレミアム系の泡はペアリングの幅が凄まじく広い!
※キノコとの相性が良いとネットで探すと書いてありますがキノコのボリューム感だと熟成した泡に負けます。かき揚げ風に揚げて香ばしさとボリュームを加えると合います!(椎茸はボリューム強いのでグリルで充分美味しいです)
ベスト漬物
・茄子の浅漬け、アフター香ばしい旨みが漬物の旨みと合う!
・沢庵、アタックも悪くない、アフター沢庵の香りが心地よい!美味しい!
※奈良漬が合うと思います。個人的に苦手なので試してません。

ベストポテチ
ポテチではないのですがトルティーヤチップスの、
ドンタコスやドリトスのタコス味が凄まじく美味しかったです!

Vino Hayashi 井手 大阪営業所長 J.S.A.認定ソムリエ
食育アドバイザー 横浜市で誕生 福岡に6年、関西で33年。 O型。42歳。 ワイン業界で約18年、レストランや料飲店での営業のほかにペアリングのコンサルもこなし、飲食とフットサルと笑いを愛するポジティブ関西人! 好きなワインは、弊社取り扱い生産者カステルユゥヴァルのミュラートゥルガウ、コントゥッチのヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノ。

Vino Hayashi 井手
大阪営業所長
J.S.A.認定ソムリエ
